19世紀のPoincaréの研究に起源をもつと言われる力学系理論は,分岐現象やカオスなどの非線形現象の理解を初め大きく発展し,さまざまな分野で応用され,多くの成功を収めています. 力学系およびその応用に関連した広い分野から講師をお招きし,1年の期限付きでセミナーを開始することに致しました. 力学系とその応用について, これまでに得られている研究成果並びに今後の研究の方向性について議論できたらと思います. 皆様のご参加をお待ちしております.
セミナー世話人: |
矢ヶ崎 一幸 (京都大学)![]() |
日時: 2024年7月26日(金)15:00~
場所:
京都大学 吉田キャンパス本部構内総合研究7号館1階情報3講義室
講演者:
高安 亮紀 氏 (筑波大学)
講演題目:厳密な数値求積による微分方程式のモノドロミーの構築
講演概要:
本講演では、複素領域における有限次元線形微分方程式のモノドロミー作用を求める構成的アプローチを紹介する。モノドロミー作用は微分方程式の解の多値性を特徴付けるものであり、複素領域の位相的性質を反映するものである。我々のアプローチは、領域内の基点における基本解から微分方程式を厳密に数値積分する方法に基づいており、これは微分方程式の解の複素領域における解析接続と等価である。一般に、解析接続を実行する領域が単連結であれば、モノドロミー作用は恒等作用であり、これは領域の基本群の単位元に相当する。一方で、領域内に特異点がある場合、特異点を囲むループに沿って解析接続すると、モノドロミー行列と呼ばれる正則行列が得られる。したがって、区間演算に基づく解析接続によりモノドロミー行列の厳密な包含を構築することで、基本群から一般線形群への群準同型を表す非自明なモノドロミー作用(モノドロミー表現)を提供することができる。講演では、まず超幾何微分方程式のモノドロミー行列を求める簡単な例から説明を始め、複素2次元の複素多様体であるK3曲面に関するPicard-Fuchs微分方程式のモノドロミー作用の厳密な構成に対する計算機援用証明の結果を紹介する。さらに、荷電ブラックホールの対生成モデルに対するモノドロミー行列の応用例や、微分ガロア理論に基づくMorales-Ramis理論を利用した力学系の非可積分性の計算機援用証明の例も取り上げる予定である。
※ 講演後に懇親会を予定しています.参加をご希望される方は7/12(金)までに
世話人までご連絡下さい.