■ ローレンツ系
\[
\dot{x}=\sigma(y-x),\quad
\dot{y}=\rho x-y-xz,\quad
\dot{z}=-\beta z+xy,\quad
x,y,z\in\mathbb{R}\quad
\text{($\sigma,\rho,\beta\in\mathbb{R}$は定数)}
\]
ローレンツ系は,気体の対流現象を記述する偏微分方程式を (モード展開とモード打ち切りにより)
単純化して得られる常微分方程式系である.
気象学者のローレンツ (Edward Lorenz) は,1963年に発表された論文において,
パラメータの値が$\sigma=10,\rho=28,\beta=8/3$の場合の
数値シミュレーションの結果を与え,
解が非周期的かつ複雑な挙動を示すことを発見した.
そのため,この方程式系には彼の名前が付けられている.
まず,ローレンツと同じように,
パラメータの値を$\sigma=10,\rho=28,\beta=8/3$に固定する.
- "lrnz1.py"を使用
(クリックすると,Pythonのプログラムをダウンロード可能)
初期値を$(x,y,z)=(-7.6,-3.6,30)$とし,
変数$x$の時間変化をプロット
変数$x$が不規則に時間変化していることがわかる.
微分方程式系で見られるこのような現象も一般にカオスと呼ばれる.
- "lrnz2.py"を使用
上と同様に計算された軌道を3次元$(x,y,z)$空間にプロット
軌道は蝶が羽を開いたような形を描き,
特に非周期的であることがわかる.
また,微分方程式系の場合も写像の場合と同様に,カオスにはその軌道が初期値に敏感に依存するという,
初期値鋭敏性またはバタフライ効果と呼ばれる性質がある.
この現象を見てみよう.
- "lrnz3.py"を使用
初期値 $(x,y,z)=(-7.6,-3.6,30)$ (黒) と$(-7.601,-3.6,30)$ (赤) に対する
変数$x$の時間変化
$t=10$ のあたりまでは2つの曲線はほぼ一致しているが,それを過ぎると大きく異なっており,
初期値鋭敏性またはバタフライ効果と呼ばれる性質のあることがわかる.
後者の初期値 $(x,y,z)=(-7.601,-3.6,30)$ に対して計算された軌道を3次元$(x,y,z)$空間にプロットする.
- "lrnz4.py"を使用
上で見たように各成分の時間的な変化は異なるわけであるが,
軌道は初期値 $(x,y,z)=(-7.6,-3.6,30)$ に対して計算された軌道と同様に,蝶が羽を開いたような形を描いている.
プログラム lrnz1.pyとlnrz2.pyの"r=28","s=10"や"b=8/3"の行を変更して,異なる $\rho$,$\sigma$ や $\beta$ の値に対してこれらの結果がどのように変化するか調べてみよう.
次のページ
力学系の数値シミュレーション・トップページに戻る
無断転載禁止
Latest Updating is on March 6, 2024.