■ 周期外力の作用するダフィング方程式
\[
\frac{d^2x}{dt^2}+\delta\frac{d x}{dt}+a_1x+a_3x^3=\gamma\cos\omega t,\quad
x\in\mathbb{R}\quad
\text{($a_1,a_3,\delta,\gamma,\omega$ は定数かつ $\delta,\gamma,\omega>0$)}
\]
または
\[
\frac{dx_1}{dt}=x_2,\quad
\frac{dx_2}{dt}=-a_1x_1-a_3x_1^3-\delta x_2+\gamma\cos\omega t,\quad
(x_1,x_2)\in\mathbb{R}^2
\]
1918年に出版された書籍において電気工学技師のダフィング (Georg Duffing) により最初にその解が調べられたので,
上の微分方程式には彼の名前が付いている.
また,1890年に出版された論文でポアンカレも $\delta=0$ の場合の方程式について触れている.
まず,$a_1=1$ の線形系 $a_3=0$ の場合を考える.この場合,厳密解が
\[
x=r_0\cos(\omega t-\phi)+e^{-\delta t/2}(C_1\cos\omega_0 t+C_2\sin\omega_0 t)
\]
と求められる.ここで,$C_1,C_2$ は任意定数で,
\[
r_0=\frac{\gamma}{(1-\omega^2)^2+(\delta\omega)^2},\quad
\phi=\arctan\left(\frac{\delta\omega}{1-\omega^2}\right)
\]
である.$t\to\infty$ とすると
\[
x=r_0\cos(\omega t-\phi)
\]
となり,十分時間が経過した後,解は,外力と同じ角振動数 $\omega$ の,位相が外力よりも $\phi$ だけ遅れた調和振動となる.
$\omega$ と $r_0/\gamma$ の関係を図示すると以下のようになる.
減衰定数 $\delta$ が小さい場合には,振幅 $r_0$ は $\omega=1$ 付近で最大となる.
この現象を共鳴または共振という.
一方,$a_3\neq 0$ の場合,この微分方程式を厳密に解くことはできず,解の挙動は複雑なものとなる.
以下ではその様子を見てみよう.
まず,$a_1=a_3=1$,$\delta,\gamma=0.1$,$初期値を $(x_1,x_2)=(0,0)$ に固定する.
- "duf1.py"を使用
(クリックすると,Pythonのプログラムをダウンロード可能)
$\omega=1$ に対する軌道
線形系 $a_3=0$ の場合と同様に,
$t\to\infty$ のとき $x(t)$ は振幅が一定の周期軌道に漸近する.
- "duf2.py"を使用
$\omega=1.1$ に対する軌道
$t\to\infty$ のとき $x(t)$ は振幅が一定の周期軌道に漸近する.
$\omega=1$ のときよりも振幅は大きい.
これは $\omega=1$ の付近で振幅が最大となる線形系 $a_3=0$ の場合と少々異なる.
- "duf3.py"を使用
$\omega=1.2$ に対する軌道
$t\to\infty$ のとき $x(t)$ は振幅が一定の周期軌道に漸近する.
$\omega=1.1$ のときよりも振幅は小さくなる.
次に,$\omega$ を0.8から1.4まで増加させ,十分時間が経過したときの (定常状態における) 振幅
\[
r=\sqrt{x_1^2+x_2^2}
\]
をプロットする.
- "dufb1.py"を使用
$\omega$ を増加させたときの定常状態の振幅の変化
$\omega=1.23$ 付近で振幅は突然小さくなる,ジャンプ現象が見られる.
これは分岐が起きていることに起因する.
逆に,$\omega$ を1.4から0.8まで減少させ,定常状態における振幅 $r$ をプロットする.
- "dufb2.py"を使用
$\omega$ を減少させたときの定常状態の振幅の変化
$\omega=1.16$ 付近で振幅は突然大きくなるジャンプ現象が見られる.
これも分岐が起きていることに起因する.
上の2つの結果を重ね合わせる.
- "dufb3.py"を使用
$\omega$ を増加あるいは減少させたときの定常状態の振幅の変化
$\omega$ を増加させた場合と減少させた場合では振幅の変化の仕方が異なる.
このような現象をヒステリシスという.
プログラム dufb1.py〜dufb3.pyの"d=0.1"や"g=0.1"の行を変更して,異なる $\delta$ や $\gamma$ の値に対してこれらの結果が
どのように変化するか調べてみよう.
次に $a_1=-1$,$a_3=1$ の場合を考える.
この場合,周期外力の作用するダフィング方程式の挙動はさらに複雑になる.
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Latest Updating is on April 11, 2024.