あとがき
思えば,博士課程の学生で力学系の研究を細々と始めた頃 (40年位前) は,
このサイトで取りあげた結果を得るのも
中々大変であった.
当時,実際にやっていたことを書くと,
研究指導はおろか,周りに力学系の研究者がいた訳でもなく,
論文や書籍を参考に
見よう見まね,あるいは手探り状態で,
(Runge-Kutta法ではなく) Runge-Kutta-Gill法
(大学に入っていた大型計算機に
ライブラリとして提供されていたため使用が容易であった)
によりダフィング方程式に類似の
(3次関数ではなく,
傾きの異なる1次関数をつなげた形の非線形性をもつ)
2階非斉次微分方程式の数値解を計算してポアンカレ写像の軌道を
求めるFORTRANのコードを書き,
その計算結果を (かなり年配の方でないとわからないと思うが) XYプロッタで
ストレンジ・アタラクターを描くといったものである.
描いている途中でXYプロッタのペンのペン先がダメになったりして,
まるでペンの耐久試験のようでもあった.
また,学部の学生実験で使用されていた実験装置をお借りして
計算結果を
実験により検証したりもしていたが,
学位論文の研究テーマとは異なっていたこともあり,今考えると,論文として
発表するには至らなかったのは残念であった.
学位取得後,本格的に力学系の研究を開始するに至ったが,
計算能力は
当時のPCでは間に合わず,大型計算機が使用できる環境でもなかったので,
その代わりにSUNのワークステーションを
使用する期間が20世紀終わり頃まで続き,
また,XYプロッタも90年代半ば頃まで使用していたように思う.
その頃までの
自分の論文にはそういう図が掲載されている.
それから,月日が流れ,今や容易に力学系の数値シミュレーションが
実行できる時代になっている.例えば,
エノン・ハイレス系に対するポアンカレ写像の軌道の計算についても,
20年位前に発表した論文の中で別のハミルトン系に
対して同様の計算を行ったが,そのときは結構大変であった.
当時,用いた計算方法を周りで聞かれて説明しても,
余り理解してもらえなかったような印象である.
このように力学系の数値シミュレーションが容易になったのは,
PCの性能が高くなったというだけでなく,
pythonの
登場が大きいと思う.高校の
「情報」の授業でも使用されるように
なったことを知り,ここでも使用することにした.
このサイトの内容は高校生でも
それ程困難なくフォローできるように思う.
30年位前に分担執筆した本ではBASIC言語で
書いたプログラムを載せて
もらったりしたが,おそらく今ではほとんど
役に立たないであろう.
pythonがBASIC言語の
ようになってしまうのかはよくわからないが.
最後に,自分のように苦労してプログラムを書き,
論文や書籍に掲載された通りの結果を得たときの感動のようなものを
感じるかは少々疑問ではあるが,
このサイトにより,力学系に関心をもち,さらに勉強していく
きっかけになるような
ことがあれば幸いである.
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Latest Updating is on April 3, 2024.