第97回:3月12日(土)15:00から
京大工学部1号館
伊藤慧吾氏(京都大学)
『非対称な自然振動数分布を持つ蔵本モデルにおける転移現象』
集団同期現象のダイナミクスを記述することができる蔵本モデルでは、様々な
タイプの自然振動数分布を仮定することが可能である。また、平均場結合を仮
定しているので、あるクラスの自然振動数分布を仮定すれば、無限系のダイナ
ミクスを少数の秩序変数などで記述可能である。自然振動数分布が対称性と二
峰性を持つ場合には、結合強度を大きくしていくと、秩序変数が臨界値におい
て不連続な転移を示す例が報告されている[1]。このように、これまでの解析の
多くは自然振動数分布に対称性を仮定している一方、非対称な場合の転移につ
いての十分な理論的解析はない。本研究では、二つのローレンツ分布の積で表
される分布関数を導入し、主に自然振動数分布が非対称性と二峰性を持つ場合
の転移を調べた。
本発表では始めにN 体数値シミュレーションを行い、結合強度を大きくしてい
くと、同期解への連続的な転移の後に不連続な転移を示す場合がある結果を報
告する。さらに理論解析を行うために、素子数を無限大にする極限において位
相振動子集団のダイナミクスを、少数自由度のダイナミクスへ縮約する
Ott-Antonsen ansatz[2] を導入した。縮約系における定常解の安定性解析を
行い、得られた同期解の転移現象についても詳しく報告する。
[1] L.L. Bonilla, J.C. Neu, and R. Spigler, J. Stat. Phys, 67, 313 (1992);
E.A. Martens, E. Barreto, S.H. Strogatz, E. Ott, P. So, and T.M. Antonsen,
Phys. Rev. E 79, 026204 (2009).
[2] E. Ott and T.M. Antonsen, Chaos 18, 037113 (2008).
Last modified: Fri Feb 26 18:48:20 JST 2016