第85回:2月2日(土)15:00から
京大総合研究8号館
小川駿(京大情報)
『平均場模型における非平均場的臨界現象』
長距離相互作用系では, 物理量の示量性や加法性が成立しないので, 統計力学
や熱力学が有効でないことがある. ハミルトニアン平均場(HMF)モデルは長距離
相互作用系の研究に有用なトイモデルであり,平衡, 非平衡状態において粒子数
を無限大に取る極限で平均場近似が厳密に成立することが知られている[1].
HMFモデルは平衡状態ではニ次相転移を起こし, 臨界指数は平均場理論から得ら
れるものと一致する.  HMFモデルのダイナミクスは, 粒子数が十分に大きい場
合にVlasov方程式で良く記述される.

このVlasov方程式に基づく線形応答理論により, 感受率を厳密に得ることがで
きるが,秩序相における感受率の臨界指数が平均場理論の予測する値とは異なる
ことが[2]で示唆されていた. 本講演ではまず, 秩序相における線形応答理論か
ら得られた感受率の臨界指数が1/4になり,確かに平均場理論から得られる値と
異なることを[2]で得られた厳密解から導出する. そして, この差異がVlasov方
程式の無限個のCasimir不変量による拘束条件由来であることを示す.

本講演はAurelio Patelli氏(Univ. Firenze)と山口義幸氏(京大)との共同研究
に基づく.

[1] A. Campa, et al., Phys. Rep. 480, 57 (2009), and references therein.
[2] S. O. and Y. Y. Yamaguchi, Phys. Rev. E 85, 061115 (2012).

Last modified: Wed Apr 24 14:12:11 JST 2013