第30回:4月15日(土)15:00から
京大工学部8号館3F南演習室
松林達史
『銀河中心に存在する巨大ブラックホール形成過程の謎と 中質量ブラックホールの発見』
概要:
本発表では、前半に天文学の概要、後半にN体数値計算による最近の研究成果の
紹介を行う。

銀河中心に存在する巨大ブラックホール(SMBH)の形成過程は、1970年代より熱く
議論されてきたがいまだ謎であった。しかし2000年に、今まで発見されてこな
かった中間質量サイズのブラックホール(IMBH)の発見によって再び熱く注目され
るようになってきた。戎崎らは、銀河中心近くの高密度星団で形成された IMBH
が星団への力学的摩擦で中心に沈み、 IMBH 同士が合体してSMBHが成長するとい
うシナリオを提唱した[1]。しかし、このようなメカニズムで SMBH の成長が可
能か、特に IMBHが十分短い時間で SMBH と合体できるかどうかはわかっていない。

本研究では、我々は銀河中心領域での IMBH の軌道進化をN体シミュレーション
によって調べた[2]。初め、IMBHを0.1pc離れた円軌道上においた。 この結果、
IMBHは力学的摩擦によって銀河中心に沈み、このタイムスケールは理論的な予測
と一致するが、0.01pc程度まで近づくと、沈むタイムスケールが理論予測より遥
かに長くなることが分かった。そこで、より高分解能なシミュレーションで調べ
た結果、軌道長半径の進化は確かに遅くなるが、離心率は大きくなる事が分かっ
た。この結果により、IMBHは十分短い時間でSMBHと合体することが可能だと言う
ことを明らかにした。

また、これらのサイズのBHは合体の際に強力なエネルギーを重力波として放出す
る。我々の見積りでは年間数百発起きていることがわかった[3]。これは、2010
年以降に打ち上げが予定されている重力波アンテナ(LISA/DECIGO/BBO)の重要な
ターゲットとなっている。



[1] Missing Link Found? The "Runaway" Path to Supermassive Black Holes
        Ebisuzaki, Toshikazu et al.
        2001ApJ...562L..19E

[2] Evolution of Galactic Nuclei. I. Orbital Evolution of IMBH
        Matsubayashi, Tatsushi; Makino, Junichiro; Ebisuzaki, Toshikazu
        http://arxiv.org/abs/astro-ph/0511782

[3] Gravitational Waves from Merging Intermediate-Mass Black Holes
        Matsubayashi, Tatsushi; Shinkai, Hisa-aki; Ebisuzaki, Toshikazu
        2004ApJ...614..864

Last modified: Mon Apr 10 12:43:29 2006