第27回:11月26日(土)15:00から
京大工学部8号館3F南演習室
新山友暁(立命館大学)
『アルカリハライドクラスター自発的混晶化現象の分子動力学による解析』
ナノメートルサイズクラスターの特異現象の一つとして、金属クラスターの
自発合金化現象が報告されている[1]。
これは、2種原子(例えば金と銅)からなる金属クラスターが
室温下で固相のまま急速に合金化する現象で、
これと類似の現象がアルカリハライドクラスターにおいても、
自発混晶化現象として存在することが近年報告されている[2]。
これらの混合現象は生成熱やイオン半径比などよって決定される
臨界径以下で発生し、その臨界径以上では混合は進行しないという意味で
サイズに誘起された現象である。
この2つの混合現象は共通した特徴を持つが、アルカリハライド系は
(Au-Cu)金属系に比べ10倍近い臨界径を持っており、(Au-Cu)系よりも
混合傾向が強いという特異性がみられる。
このような点を考慮に入れると、両者は異なるメカニズムにもとづく現象
である可能性がある。
自発合金化現象については、表面拡散で誘起される運動が動径方向への
混合に転化する「皮めくれ機構」が[3,4]で提案されているが、アルカリハライド系の
自発混晶化現象が同様の機構で進行している保証はない。
本研究では、分子動力学シミュレーションによって
アルカリハライドクラスターの自発混晶化現象のメカニズムを調べた。
その結果、[3,4]で予想される皮めくれ機構のようなメカニズムは
観測されず、混晶の素過程は隣接原子どうしの位置交換によるものであった。
また、[3,4]と異なり、格子欠陥が比較的頻繁に観測された。
さらに、[5]の研究に引き続いて、様々な原子種の組み合わせについて
ついてシミュレーションをおこなうことで、混晶化における生成熱依存性などを
評価し、混晶の駆動力についても報告し議論したいと考えています。
[1] H.Yasuda and H.Mori, Phys.Rev.Lett, 69 p.3747(1992) ほか
[2] Y.Kimura, Y.Saito, T.Nakada, C.Kaito Physica E 12 (2002) ほか
[3] Y.Shimizu, K.S.Ikeda, S.Sawada Phys.Rev B 64 (2001)
[4] T.R.Kobayashi, K.S.Ikeda, Y.Shimizu, S.Sawada Phys.Rev B 66 (2002)
[5] 渡辺・小林・清水・澤田・池田:日本物理学会第59回年次大会 27pWA-6(九州大学)
Last modified: Thu Nov 24 15:16:26 2005