第12回:4月24日(土) 15:00
京大工学部8号館3階南演習室
後藤振一郎(京都大学 情報学研究科 数理工学専攻)
『大自由度古典ハミルトン系における
マクロ変数平衡期待値の相互作用距離依存性』
大自由度ハミルトン系, 特に長距離力相互作用系は
自己重力系やプラズマ物理等の現実の物理に現れ重
要である. しかし, マクロ変数のミクロカノニカル
統計予言値やカノニカル統計予言値に差異が生じ得
ることが知られ, その差異の出現や平衡状態への緩
和課程に関心が持たれている.
我々は, 1パラメーター α ( 0≦α<1:長距離
力系、1<α≦∞: 短距離力系 ) で相互作用距離
を規程し, 空間1次元格子にスピンを配した強磁性
型のXY古典スピンモデル(:α- XYモデル)につ
いて上記の関心のもとに研究を行なっている. この
モデルは N=∞ でのカノニカル分配関数が厳密に
計算でき, また正準変数が連続的な値をとるので古
典力学とカノニカル統計の間の関係を調べるのに適
した系になっている. また長距離力系で2次相転移
を起こすことが知られ, 相転移点前後でのリヤプノ
フ数等の自由度依存性などの計算もなされ, 臨界現
象と力学の間の関係についての研究も行なわれてい
る.
特に今回, マクロ変数である磁化や温度の平衡期待
値について N=∞ カノニカル統計 (解析的結果)
と正準方程式 (数値的結果) の双方を比較したので
報告する. α により系が長距離力系に選ばれている
時 (0≦α<1),
マクロ変数の, 正準方程式による平衡期待値は,
α→ 1に近ずくと, 臨界エネルギ U_c 近
傍で N=∞ でのカノニカル統計予言値への漸近
が遅い,
ことを見出した.
今回の発見は2次相転移系において, エネルギー軸
以外に, 相互作用距離軸に対しても非自明な現象の
存在を示唆する. この結果の詳細について議論する.
Last modified: Mon May 17 15:17:19 2004