TX フォントを使おう

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はじめに

今までは TeX のフォントといえば Knuth がデザインした Computer Modern フォントを使うことがほとんどでした。 しかし,Computer Modern フォントはデザインがいまいちで使う気になれないという人も多いと思います。

そんな人には Times を TeX 用に配置し直した TX フォントをお薦めします。 私の最新刊 『[改訂版]LaTeX2e 美文書作成入門』 も TX フォントを使っています。

Computer Modern Roman/Italic と TX フォントの出力例です(PNG画像)。 本物の Times ではなく Ghostscript 付属のフリーの互換フォントを使っています。

Computer Modern と TX フォントの比較

LaTeX2e はもともと times パッケージを使うと Times フォントになるように作られていますが, times パッケージは TeX の得意な ffi や ffl のリガチャ(合字)も出せず, 数式部分は Computer Modern になってしまいます。 数式部分も Times にする mathptmmathptmx というパッケージもありますが, 出力できない数学記号もあり,バランスもいまいちでした。

TX フォントの作者 Young U. Ryu さんは Palatino ベースの PX Fonts も作っておられます。

インストール(Windows)

角藤さん の Windows 版 pTeX には含まれています(txpx-pazofonts.tar.gzt1fonts.tar.gz)。 Ghostscript もインストールする必要があります。

dviout で Cannot resolve Fonts というエラーが出る場合は, C:\usr\local\share\texmf\dvips\config\config.ps

p +txr.map
という1行を書き込んでみてください。

TX フォントのバージョンを上げたなら /usr/local/share/texmf/fonts/pk/modeless/txr/ の中をすべて消してください。

インストール(Linux)

Vine など Red Hat 系 Linux 用の RPM を 土村さん が配布してくださっています。

teTeX 用 RPM を プレイン西島さん が配布してくださっています。

インストール・更新は他の RPM と同じです。

# rpm -Uvh ダウンロードしたRPMファイルの名前

TX フォントのバージョンを上げたなら /usr/local/share/texmf/fonts/pk/modeless/txr/ の中をすべて消してください。

インストール(Macintosh)

内山さんが TXFONTSをMacpTeXで利用するための情報 という完璧な解説を書いてくださっています。 ぜひそちらをご覧ください。

インストール(その他)

次のところからダウンロードします(約 3.5M バイト)。

ドキュメントを読んでインストールします。 最近の teTeX ベースのシステムなら次のように行います (Vine 2.x をはじめ多くのシステムでは /usr/local/share/... ではなく /usr/share/... です)。

もしこれでうまくいかなければ, kpsewhich psfonts.map と打ち込んで psfonts.map の在処を調べ,それに txr.map の内容をアペンドしてしまってください。

psfonts.map を書き換えるのはちょっと強引かもしれません。 もとはといえば /usr/bin/mktexpk が悪いのですから,これを teTeX の mktexpk(多少手を加えたかも)と取り替えてください。

texmf ディレクトリで展開するだけでほぼインストールが完了するものも作りました:

展開後,上の config.ps の編集に進んでください。

使い方

LaTeX2e を使っている場合は,次のようにして txfonts パッケージを読み込みます。

\documentclass{jsarticle}  % たとえば
\usepackage{txfonts}
\begin{document}

……本文……

\end{document}

TXフォント 2.1 以降では Computer Modern Roman を Times で置き換えるだけでなく, Computer Modern Sans Serif を Helvetica で置き換え, Computer Modern Typewriter をこれと同じ幅の独特のタイプライタフォントで置き換えます。 Helvetica は \usepackage{times} としたときに比べて95%に縮小されます。 このほうが本文の Times とのバランスが良くなります。

TX Typewriter フォントの代わりに Computer Modern Typewriter を使うには

\usepackage{txfonts}
\renewcommand{\ttdefault}{cmtt}
\DeclareMathAlphabet{\mathtt}{OT1}{cmtt}{m}{n}
\SetMathAlphabet{\mathtt}{bold}{OT1}{cmtt}{m}{n}
とします。Courierを使いたいなら
\usepackage{txfonts}
\renewcommand{\ttdefault}{pcr}
\DeclareMathAlphabet{\mathtt}{OT1}{pcr}{m}{n}
\SetMathAlphabet{\mathtt}{bold}{OT1}{pcr}{b}{n}
とします。

数学で amsmath パッケージの類を使うなら

\usepackage{amsmath}
\usepackage{txfonts}
とします(つまり,他のパッケージの後で txfonts を読み込みます)。 amssymb を読み込む必要はありません。

数式で g,v,w,y のデザインを Times Italic 風ではなく伝統的な数式風(g が 9 のように見えるもの)にするには

\usepackage[varg]{txfonts}
とします。なお,g だけ 9 のように見えるものにするには,g の代わりに \varg と書くか,あるいは本田さんが TeX Q&A248 で書いてくださっている方法を使います。

PostScript プリンタによってはうまく動作しないものがあるようです。 その場合は dvips に -j0 オプションを与えてみてください (partial downloading をしないというオプションです)。

TXフォントのバグ報告は comp.text.tex に投稿してください。 ただしもう Ryu さんは txfonts を当分いじらないおつもりのようです。

その他

config.pstxr.map ではなく txr1.map と書けば Adobe の Times フォント(もしあれば)を埋め込みます。 txr2.map と書けば Ghostscript 付属の Times そっくりのフォントを埋め込みます。 txr.map では欧文フォントが埋め込まれないので,Times の代わりに Times New で表示され,見栄えがやや異なることがあります。 たとえば $A$ の傾きがかなり違うので,$\hat{A}$ のハットがおかしな位置に付きます。

TeX Q&A869(藤花さん) によれば,\usepackage{amsmath,txfonts} だけでは \checkmark などごく一部の記号が出ないようです。 \usepackage{amsmath,amssymb,txfonts} とするか,あるいは \checkmark を定義する必要があるようです。

TeX Q&A1440(本田さん) による $\to$ だけ txfonts でなく CM に戻す方法:

\DeclareSymbolFont{cmSymbols}{OMS}{cmsy}{m}{n} 
\DeclareMathSymbol{\cmrightarrow}{\mathrel}{cmSymbols}{"21} 
\let\to\cmtrightarrow

TeX Q&A2669(角藤さん) による $\ell$ だけ txfonts ではなく CM に戻す方法:

\DeclareSymbolFont{cmletters}{OML}{cmm}{m}{it} 
\DeclareMathSymbol{\ell}{\mathord}{cmletters}{"60} 

\usepackage{txfonts} しないで $\int$ だけ txfonts を使う方法:

\DeclareSymbolFont{txlargesymbols}{OMX}{txex}{m}{n}
\DeclareMathSymbol{\txintop}{\mathop}{txlargesymbols}{"52}
\let\intop\txintop

他の選択肢

TX フォントの数式のバランスが気になる方のために,Times 系の商品フォントをあげておきます。

MathTime については ここ にまとめて書きました。

フリーのもので,いくつかのフォントを Times にするためのパッケージもあげておきます。


リンクはご自由にどうぞ。

ご質問は掲示板 TeX Q & A をご利用ください。

松阪大学 奥村晴彦 okumura@matsusaka-u.ac.jp
Last modified: 2003-01-09 07:36:19