コロキウム

常微分方程式の非可積分性および関連するダイナミクス

本永翔也 氏

2021年9月15日(水) 17時00分

総合研究10号館317号室 / Zoom会議 (ハイブリッド)

微分方程式の非可積分性判定は力学系の分野において古くから重要な研究テーマの一つである.本講演ではハミルトン系に限らない一般的な微分方程式系を取りあげ,それらの非可積分性判定の条件を与えるとともに,周期軌道やホモクリニック軌道,第一積分と可換なベクトル場の保存との関連性を論じる. まず,パラメトリック励振を受ける,Duffing系を含む一般的な非線形振動子に対して,微分ガロア理論に基づく,AyoulとZungにより一般的な力学系に拡張されたMorales-Ramis理論を用いて,非可積分であるための十分条件を与える.特に,これらの系の多くではカオス挙動が起こることが数値実験等で確認されているが,この結果はそれらの多くの場合の非可積分性を初めて数学的に証明するものである.次に,可積分な系が摂動を受ける解析的な微分方程式系を取りあげ,非摂動系の周期軌道やホモクリニック軌道,第一積分,可換なベクトル場が摂動系において保存するための必要条件を与える.さらに,この結果を拡張し,摂動系が摂動パラメータについても解析的な第一積分と可換なベクトル場が存在するという意味で可積分とならないための十分条件を与える.また,1自由度ハミルトン系が時間に関して周期的な摂動を受ける場合に対して,得られた結果とメルニコフの方法との関係を明らかにする.特に,外部励振を受ける,2重ポテンシャルを有するDuffing系が,横断的なホモクリニック軌道が存在せず,カオス挙動が起こらない場合に対しても非可積分であることを証明する.