ハミルトン系
ハミルトン系は力学系の一部です。
研究レベルではマニアックと思われがちですが、
実は物理の基礎としてとても大事です。
力学系とは?
何らかのルールで時間発展が定まっている系を力学系と言います。
つまり時間発展する系は、すべて力学系研究の対象と言えます。
時間・空間が離散か連続かで分類してみましょう。
時間\空間
| 離散
| 連続
|
離散
| I. セル・オートマトン
| II. 写像
|
連続
| III. 常微分方程式
| IV. 偏微分方程式
|
ハミルトン系は主に III として記述されますが、
シンプレクティック性を持った写像(II)を考えるとか、
分布関数の時間発展を考える(IV)ということもあります。
以下では、上の分類の III を少し詳しく観てみましょう。
ハミルトン系とは?
ハミルトン系とは
- (×) エネルギーというものが定義できてそれが保存するもの
ではなく
のことです。
シンプレクティック構造
シンプレクティック構造って何なの、という問題にはここでは深入りしません。
ざっくりとはハミルトン関数 H(q,p) が与えられた時に
- dq/dt = (H の p 偏微分)
- dp/dt = - (H の q 偏微分)
で時間発展が決まるモノ、と思ってもらえれば結構です。
外力などが時間的に変化する場合には、
ハミルトン関数は時間 t に陽に依存して H(q,p,t) となりますが、
時間発展のルールは上の方程式の形になります。
陽に依存せず H(q,p) となる場合には、
(q(t),p(t)) を上の方程式の解軌道として、
H(q(t),p(t)) の時間変化はゼロとなることを証明できます。
つまり、「とある関数の値(エネルギー)が保存する」というのは、
ハミルトン系である必要条件であって十分条件ではありません。
もっと保存
シンプレクティック構造があると H(q(t),p(t)) が時間によらず一定になります。
しかしさらに、相空間において「2次元の面積が保存」します。
さらにさらに「4次元の超面積」「6次元の。。」「8次元の。。」
という具合に、偶数次元の超面積が保存します。
これらの保存則は、ハミルトン関数 H には関係なく、
シンプレクティック構造があるというだけで決まります。
じゃあ特殊なの?
このように保存則がいっぱいあるためハミルトン系は制限が強い系と言えますが、
同時に物理においては重要な役割を果たしている系とも言えます。
以下、ハミルトン系であることを出発点にしている理論を挙げます。
学部で学習する物理分野のほとんどをカバーしています。
物理では、現実の複雑な問題を理想的な状況に簡単化してから考える、
というのが常套手段ですが、
その理想的な状況がハミルトン系として表されることが多いのです。
Last modified: Mon Jun 20 14:39:03 JST 2016