研究概要

主に、大自由度ハミルトン系の熱・統計力学や、 運動論によるダイナミクスの解析をしています。

大自由度系と熱平衡状態

大自由度ハミルトン系は、長時間経つと熱平衡状態に到達します。 例えば、下の図はある系で少しだけ変えた初期状態3つ(上段)が、 長時間経つとやはり少しだけ異なる熱平衡状態(下段)に到達することを 示しています。

長距離相互作用系と準定常状態

長距離相互作用系

長距離相互作用系とは、 遠くにまで及ぶ力によって、粒子たちが相互作用している系です。 例えば、重力系や電磁気系、2次元上のオイラー流体系などが挙げられます。

準定常状態

長距離相互作用系では、初期状態からすぐに熱平衡状態へと行かず、 準定常状態と呼ばれる状態に長時間留まります。 留まる時間は、粒子数の増大と共に長くなり、 実際上は準定常状態しか観測できない系も存在します。 例えば、銀河や木星の大赤斑は準定常状態にあると思われています。

準定常状態における相転移

上の図では、熱平衡状態まで到達してしまうと 3つの初期状態の違いがあまりわかりませんでしたが、 準定常状態では大きな違いとなって表れます。 左の二つは目玉ができ、右の一つは目玉ができていません。 こういった振る舞いを、非平衡統計力学や運動論を用いて解析します。

応答理論

フタが閉まった缶にいくらかのジュースが入っているとして、 どれくらい入っているか調べるためにどうしますか? コンコンと缶を叩いて音を聞いたり、揺すったりしませんか?

これらは何をしているのかというと、缶に働きかけて、 その応答を調べることで見えない缶の中身を調べようとしているのです。

同じように、系に対して外力で働きかけて、 その応答で系の情報を引き出そうというのが応答理論です。 外力が小さいときの線形応答理論や、やや大きくても使える非線形応答理論、 およびそれらの応用を研究しています。

ダイナミクス

熱平衡状態や準定常状態は「静的」な状態ですが、 「動的」なダイナミクスの研究も行っています。

その筋では有名な Landau 減衰(1946)は、 系の状態が簡単な場合についての解析です。 より一般的な状態についての研究は、 技術的な困難もあり長い間の問題となっていました。 この問題に対する研究成果も得ています。


Last modified: Wed Apr 10 18:47:06 JST 2013 Last modified: Fri Jun 10 18:15:32 JST 2016