第99回:9月26日(月)15:00から
京大総合研究10号館211号室
佐々真一氏(京都大学)
『ネーター不変量としての熱力学エントロピー』

「ブラックホールエントロピーはネーター電荷である」というタイトルの論文
がある。[1] この研究結果に動機づけられて、熱力学エントロピーをネータ―
不変量として特徴づけた [2]。具体的には、時間に関して非一様な変換を考え、
対称性が存在する条件を書き下し、それを満たすものがあるかどうかを問うた。
その結果、作用の引数をあるクラスの軌道に制限したときに、(一般化された
意味で)対称となる変換があることが分かった。特に、巨視的な系で示量的な
ネーター不変量を導く場合には、その変換は本質的に一意に定まり、そのとき
のネーター不変量はボルツマン公式によって与えられたエントロピーと一致し
た。この理論のもっとも驚くべき結果は、古典力学系を解析しているにも関わ
らず、「作用の次元をもった普遍定数」が時間の非一様変換に現れることであ
る。これは、エントロピーと量子論の深い関わりを示唆しているのかもしれな
い。本研究結果は、横倉祐貴氏(理研iTHES)との共同研究によるものである。

[1] R. M. Wald, Phys. Rev. D 48 R3427 (1993).
[2] S. Sasa and Y. Yokokura, Phys. Rev. Lett. 116 140601 (2016);
Editors’ suggestion
http://arxiv.org/abs/1509.08943  

Last modified: Tue Sep 20 12:05:43 JST 2016