第87回:7月6日(土)15:00から
京大総合研究8号館
新山友暁氏(金沢大学)
『結晶材料の塑性変形に内在する間欠性とスケール不変性』
大規模な崩壊をともなう事象の規模がベキ乗則 (power-law) に従うことは、
Gutenberg-Richter 則として地震の研究において古くから指摘されてきた。
その後、砂山崩壊・森林火災・超伝導体中の量子渦ダイナミクス・強磁性体の磁化 (Barkhausen ノイズ) など
様々な自然現象や社会現象においても同様のベキ分布・ベキ乗則が現れることが報告され、
1980年代後半にはこのようなスケール不変性を生み出す普遍的なメカニズムとして
自己組織化臨界 (Self-Organized Criticality, SOC) の概念が P. Bak らによって提示された。
一方で、金属などの結晶材料の塑性変形過程にベキ分布が内在していることが、
近年アコースティック・エミッションをはじめとする実験による観察から報告されている。
このような挙動は塑性変形現象に内在する生来的な性質であり、
塑性変形現象そのものを非平衡物理の立場から捉え直す必要があることを示唆するとともに、
多結晶材料の挙動を理解する新たな視点を提供するとされている。
このような塑性変形におけるスケール不変性挙動に関しては、
平均場近似や離散転位動力学によるアプローチがなされているが、
原子スケールでの構造変化を考慮した研究はなされていない。

このような結晶材料における間欠的な塑性変形挙動を、
分子動力学シミュレーションを用いて原子スケールで再現することを試みた。
本発表では、塑性変形において観察されるスケール不変性についての先行研究を紹介し、
それらに対して行った分子動力学シミュレーションの結果について述べる。
シミュレーションでは、Al をはじめとした fcc 結晶材料の数値モデルに対して
単軸引張り変形を加える状況を考え、この時起こる塑性変形によって解放される応力が
ベキ乗則に従うことを示す。
また、いくつかの金属種およびサイズの影響などについても述べる。

Last modified: Mon Jul 1 13:11:00 JST 2013