第18回:12月11日(土)15時から
京大工学部8号館3F南演習室
小路口暁(奈良女子大学物理)
『近接場光を介して相互作用する量子ドット系の性質』
誘電体に光を照射すると表面では散乱光の放射の他に非伝搬成分が局在してい
て、その非伝搬成分の局在距離は光の波長にはよらず散乱体のサイズのみを反
映する。この非伝搬光は近接場光と呼ばれ、その存在は今世紀の始めに予想さ
れていたが、近年のガラスファイバープローブの微細加工技術の進歩により、
その存在が確認できるようになり、さまざまな応用がなされると同時に、光の
回折限界(だいたい代表的なレーザーの波長の数百ナノメートル)を越えたナノ
オプティクスという新しい研究領域が開拓された。

ナノオプティクスは、これまで、量子ドットなど固体を舞台にして発展してき
て、新しい物理現象が観測されてきたが、最近では液体中の高分子の近接場光
による励起の緩和現象なども調べられ始めているようである。しかしながら、
理論的研究は世界的に見て非常に非力で進みが遅く(国際会議でも理論家がす
ごく少ないです)、最も基本的な近接場光の起源の解明とその記述法の用意も
まだ十分整備された状態にはない。更に、ナノメートルオーダーの光現象を考
えるためには、例えば、誘電率(屈折率)などの光学定数の概念の限界と拡張さ
れた定義が必要になるように、バルクという見方よりもう少し細かい階層の電
磁気現象を考える道具が必要となるが十分に整備されていない。

本講演では、近接場光はどういうものかということと、その特性を紹介し、発
表者が行ったモデル化を紹介し、そこから出てくる性質を紹介する。また、発
表者の興味の持っているオープンプロブレムと、近接場光の持っている可能性
に付いても議論したい。

発表者の研究は近接場光の性質から導かれる面白い現象をうまく導出できたと
は、客観的に考えて思えず、非伝播性からもう少し変わった性質が予測される
と思っていますが、非力なため中途半端になっている感じです。近接場の業界
は理論家が少ないのでこんなもので通ってしまいます。もう少しまともな人が
入って研究が進むといいなと思いました。みなさんが興味を持たれたら幸いで
す。

Last modified: Tue Dec 7 14:36:06 2004