力学系の標準形における Koopman 作用素に 対する固有値問題

近年,計測技術や通信技術の飛躍的発展により大容量のデータを容易に得るこ
とが可能となり, それらを解析し利用する科学的なアプローチを開発し提供
するデータサイエンスは大きな脚光を浴 びている.特に,得られたデータに基
づき,大規模なシステムのモデル化や制御の手法を確立する ことは応用上重
要な課題であり,その目的のため Koopman 作用素を用いたアプローチに大き
な 期待が寄せられている.本研究では,力学系の標準形における Koopman 作
用素およびそれとの 関連が強い Lie 作用素に対する固有値問題を取りあげ,
比較的古典的な Poincar ́e-Dulac 標準形や Hartman-Grobman の定理および比
較的最近の結果である Zung の定理を用いて議論する.特に, 平衡点における
ヤコビ行列が単純な零固有値をもつ場合と単純な純虚固有値の組を 1 つもつ
場合に ついて Lie 作用素の固有値問題の解を与え,前者は零固有値のみであ
るのに対し,後者は任意の複 素数が固有値となり,両者が非常に異なること
を示した.