アマガエルの発声行動に対する数理モデルのパラメータ推定

室内実験で二匹および三匹のアマガエルの鳴き交わしについて観察を行うと,
二匹ではそれぞれのアマガエルが位相差\piで交互に鳴き交わす逆相同期状態,
三匹ではそれぞれのアマガエルが位相差2\pi/3で順番に鳴く三相同期状態と,
二匹が同じタイミングで鳴き残りの一匹が逆位相\piで鳴く1:2逆相同期状態
が頻繁に観測される.なおこれらの同期状態での振動数は,カエルが単独で鳴
くときの振動数とは異なる.また,時間経過に伴い同期状態が変化する様子も
観察されている.これらアマガエルの合唱を記述するモデルとして,結合位相
振動子系がある.このモデルは,単独で鳴くときの自然振動数と呼ばれる振動
数と,鳴き交わす相手との相互作用を表す周期的な結合関数より構成されてい
る.先行研究では基本波と第二高調波を持つ結合関数が考察されている.この
結合関数では,三つの同期状態を安定定常に再現することはできるが,自然振
動数とは異なる同期状態の振動数を再現することはできない.また同期状態の
時間変化も再現できない,本研究では,結合関数が第三高調波までを持つ場合
を考え,定常状態の安定性を考察することによりこれらの問題の解決を図った.
まず観測実験で得られる同期状態が定常解となる結合関数の条件と定常解の安
定性を理論的に求めた.その条件をもとに,所望の現象が再現できるように結
合関数のパラメータに依存する損失関数を与えた.勾配降下法によって損失関
数の局所最小点を求めた所,観測実験で得られた振動数を持つ三つの同期状態
を再現することができた.また別の損失関数を用いることにより,時間経過に
伴い同期状態が変化する現象を再現する結合関数を求めることもできた.さら
に,得られた数理モデルを四匹系に適用することで,四匹のアマガエルのうち
二匹が同相で鳴き残りの二匹が逆位相\piで鳴く2:2逆相同期状態が主に観測
されることが予測された

Last modified: Thu Feb 28 11:43:35 JST 2019