力学系における中心多様体の数値計算

非線形現象に対する数学理論である力学系理論は, 1970 年代後半のカオスの再発見を契機として
急速に発展し,電気工学や機械工学などの工学分野を始め,さまざまな自然科学や社会科学の分野で
応用され,大きな成功を収めている.特に,安定,不安定および中心多様体と呼ばれる不変多様体
の構造は,着目した力学系のダイナミクスを理解する上で重要なものとなっている.安定および
不安定多様体に対しては,大域的な数値計算法が確立されている.一方,中心多様体に対しては,
多項式による局所的な近似計算逐次近似による数値計算が行われている程度である.本研究では,
中心多様体をベクトル関数のグラフとして表現し,その関数が満たす 1 階偏微分方程式を,微分方程式
の数値解析法のひとつであるスペクトル法を用いて直接数値的に解き,中心多様体の数値計算を行う.
さらに,具体的な適用例を示して,その有効性を検証する.