時間遅れ蔵本系における非同期状態の安定性および同期状態との共存

個々に振動する素子が相互作用によって集団としてのリズムを形成する現象を
同期現象という。蔵本系は自然振動数と呼ばれる振動数で振動する素子が相互
作用しているモデルであり、同期現象を記述する結合振動子系である。相互作
用の強さは結合定数で表され、引力的な相互作用が強くなると非同期状態が不
安定となり、複数の振動子が同一の実効振動数で動く同期状態を形成すること
が知られている。蔵本系では相互作用相手からの情報伝達が瞬時に行われると
仮定しているが、情報伝達に時間がかかることを想定し相互作用に時間遅れを
導入した時間遅れ蔵本系も考えられている。時間遅れを導入することにより、
時間遅れがない蔵本系では不安定であった非同期状態が安定になる場合がある
こと、また時間遅れなしでは非同期状態と同期状態の共存が不可能な場合でも
共存が可能となる場合があることが知られている。共存現象について先行研究
では、一山ローレンツ関数とした自然振動数分布に対して、結合定数を正とし
て共存の有無を数値的に調べているが、共存条件の理論的な導出はなされてい
ない。本研究では先行研究の拡張として正負双方の結合定数を考える。さらに
遅れ時間と結合定数がなす平面上で、非同期状態の安定領域と、安定な同期状
態と安定な非同期状態が共存する領域を理論的に求める。また理論による予測
を数値計算により検証する。
Last modified: Thu Feb 28 11:43:35 JST 2019