KdV方程式に対するAKNS系の微分Galois理論の意味での可積分性について

逆散乱法を用いて,可積分系と呼ばれる非線形偏微分方程式の初期値問題の解
を解析的に求める際,例えば,AKNS系における線形微分方程式に対する固有値
問題である,Zakharov-Shabatの固有値問題を解くことが必要となる.しかしな
がら,これらの線形微分方程式は,必ずしも,解が求積法で求められる,すな
わち,微分Galois理論の意味で可積分であるとは限らない.本研究では,KdV方
程式を取りあげ,初期関数が$u_0(x)=k\sech^2x$ ($k\in\Rset\setminus\{0\}$)
で与えられる場合に対して,AKNS系のZakharov-Shabatの固有値問題に対応する
Schr\"odinger方程式の微分Galois理論の意味での可積分性を解析する.
Schr\"odinger方程式を有理関数を係数とする2階線形微分方程式に変換し,3つ
の特異点をもつFuchs型の2階線形常微分方程式に対する木村の定理を適用して
微分Galois理論の意味で可積分となるための必要十分条件を求める.特に,初
期関数が$1$-ソリトン解に対応した$k=2$の場合を含む,$k=n(n+1)$
($n\in\Nset$)の場合,つねに微分Galois理論の意味で可積分となり,それ以外
の場合にはほとんどすべてのパラメータの値に対して非可積分となることが示
される.さらに,$k=2$の場合に対して,微分Galois理論の分野ではよく知られ
たKovacicのアルゴリスムを用いて,Schr\"odinger方程式の解を求め,その固
有値問題に関する既知の結果を確認する.
Last modified: Tue Mar 5 11:47:42 JST 2019