蔵本モデルにおける分岐予測 –非対称自然振動数分布への拡張–

多数の振動子が相互作用などによってタイミングを揃えて振動する現象を集団
同期現象とよぶ. 蔵本モデルは集団同期現象を表す代表的なモデルである. こ
のモデルは自然振動数と平均場結合を持つ振動子たちで構成され, 同期の強さ
は秩序変数で表される. 自然振動数の従う確率密度関数が一山対称の場合には,
結合強度を強くしていくと秩序変数はある臨界結合強度でゼロから連続的に転
移することが知られている. また, 自然振動数分布が二山対称の場合には結合
強度を大きくしていくと秩序変数はゼロから有限値に不連続的に転移したり,
秩序変数が振動する場合があることが知られている. このように自然振動数分
布が対称な場合に分岐図を求める研究は数多くなされているが, 非対称性があ
る場合の研究は少ない. 近年, 自然振動数分布に非対称性を導入すると, 連続
転移の後に不連続転移や振動が現れることが数値計算により報告された.

本報告書では, 非対称性がある場合を含めて, 自然振動数分布が与えられたと
きにどのような分岐図が得られるのかを理論的に調べる. 自然振動数分布とし
ては, 2 つのパラメータを変化させることで一山, 二山や対称, 非対称となる
族を与える. 与えられたパラメータに対する分岐図を求めるために, 粒子数無
限の極限である連続の式を考え, Ott-Antonsen 仮説が導く縮約系の数値計算を
行った. この結果, 分岐図の種類によってパラメータ平面上を 5 つの領域に分
割した相図が得られた. 次に, この相図を理論的に導くために, 特に非対称性
の導入により明らかになった領域に着目し, それらを特徴付ける条件を提案す
る. Ott-Antonsen 仮説の蔵本モデル以外での有用性は明らかではないが, 提案
した条件は連続の式の解析のみから与えられるため, 蔵本モデルのみならず広
い系に対して応用できる.
Last modified: Mon Apr 9 12:24:41 JST 2018