複数のグラフに依存する結合振動子系の連続極限

グラフ上の結合振動子系は,生物の神経回路,ジョセフソン素子,パワーネッ
トワークや合意プロトコルなどに対するさまざま数理モデルを提供し,それら
のダイナミクスを理解し,適切な制御を実現することは工学など応用分野にお
いても重要な課題である.特に,基礎となるグラフがもつスモールワールド性
やスケールフリー性などの多様性により,非常に挑戦的な問題となっている.
これらの系は一般に大きな次元を有し,解析は困難であるが,有力な解析手法
のひとつとして連続極限があげられる.この手法は,大次元の微分方程式系の
解を,ある積分微分方程式の解によって近似するものであり,それによりキメ
ラ状態,多重安定性,同期,コヒーレンス・非コヒーレンス遷移など多くの興
味深い現象が調べられている.さらに,理論的な裏付けが,最近Medvedev
(2014)によって与えられている.

本研究では,ネットワーク上の結合振動子系の制御への応用を考え,Medvedev
の結果を拡張し,より一般的な複数のグラフに依存する結合振動子系に対して
連続極限の手法が有効であることを理論的に証明する.より具体的には,連続
極限方程式の初期値問題に対して,解の存在と一意性および滑らかさについて
の結果を与え,確定的なグラフ上とランダムグラフ上のネットワークに対して,
グラフの節点数が無限大となるとき,結合振動子系の解が適当な意味で連続極
限方程式の解に収束することを示す.

Last modified: Wed Apr 11 12:50:15 JST 2018