測地流における周期解間のホモ/ヘテロクリニック軌道の横断性

リーマン多様体上の測地線は,ある2点を繋ぐような曲線族の中で局所的に最短
である曲線として与えられ,ホロノーム拘束を受けた物体の運動や,一般相対
性理論などとも関連する.測地線に対しては,力学系や変分学の立場からの研
究が活発になされてきた.力学系の観点からは,測地線は接束上のラグランジュ
系または余接束上のハミルトン系として考えることができる.また,変分法の
観点からは,測地線の存在性や幾何学的性質との関連性などについて,考察が
進められている.特に,ある種の周期性を持つリーマン多様体について,幾何
的に異なる2つの最短閉測地線が存在した場合に,それらを繋ぐようなヘテロク
リニック軌道が存在することなどが証明されている.本研究の目的は,それら
のホモ/ヘテロクリニック軌道の横断性を示すことである.

本論文では,回転面上の測地線を取り上げ,その閉測地線間のホモ/ヘテロクリ
ニック軌道の横断性について考察した.より詳細には,回転面上の測地線に対
応するハミルトン系を定式化し,ある仮定の下で周期解とその間のホモ/ヘテロ
クリニック軌道が存在することを確認する.その系に回転面を歪ませる意味で
の摂動を加えた系を考え,平衡点の安定多様体と不安定多様体との横断性を調
べるため,これを解析的に調べるための手法であるMelnikovの方法を適用した.
その結果,ほとんどの摂動によって系にカオス的挙動が生じることが理論的に
示された.

Last modified: Mon Feb 13 16:05:25 JST 2017