ヘテロクリニック軌道の近傍における一般的な力学系の非可積分性

可積分性は微分方程式の重要な性質であり, その判定方法の確立は微分方程式
論における基本的かつ重要な課題の一つである. 特に, ハミルトン系に対して
は, 可積分性の必要条件が,特解のまわりの変分方程式(線形化方程式) の微分
ガロア理論の意味での可積分性により与えられるというMorales-Ramis 理論が
提案され, その理論は一般的な力学系の場合に拡張されている. 本研究では,
直線的なヘテロクリニック軌道を有する一般的な3 次元微分方程式系を取りあ
げ, 可積分性の必要条件を, ヘテロクリニック軌道まわりの直交変分方程式(変
分方程式の軌道と直交する方向の成分) のモノドロミー群により与える. より
明確には, 一般的な条件の下, ヘテロクリニック軌道の近傍において可積分で
あるとき, そのモノドロミー群が同時三角化可能であり, さらに, 平衡点にお
ける微分方程式系のヤコビ行列のトレースが零である場合には同時対角化可能
であることを示す. さらに, 具体的な適用例を与え, 理論結果の有用性を確認
する. 特に, 一般的な力学系では, 非可積分であってもカオス的な軌道が存在
しない場合のあることを明らかにする.
Last modified: Tue Feb 24 10:55:38 JST 2015