一般化ハミルトニアン平均場力学系における外力応答の臨界指数

ハミルトニアン平均場モデルと呼ばれる系は単位円上を平均場相互作用によっ
て動く粒子からなり,強磁性体を表す.相互作用ポテンシャルはフーリエ第一
モードのみで表される.熱平衡状態では,単位円上のある一方向にクラスター
を形成している強磁性(Ferro)相か,一様に分布している常磁性(Para)相のどち
らかになり,二つの相の間で二次相転移を起こす.臨界点では外力に対する応
答が発散し,発散の強さを表す臨界指数は重要となり,古典的な平均場理論に
よって求めることができる.一方,平均場力学系の特徴の一つとして,ハミル
トニアンから導かれる正準運動方程式による時間発展を考えると,外力を与え
たとき,系は準定常状態と呼ばれる状態に長時間留まることが知られている.
準定常状態における滞在時間は粒子数$N$に比例する.$N$を無限大にとると,
熱平衡レベルには達しないので,準定常状態における臨界指数を求めることが
重要である.実際,熱平衡状態における統計力学的応答と,準定常状態におけ
る力学的応答とが異なる臨界指数を示しうることが,先行研究によって発見さ
れている.

本研究では,相互作用ポテンシャルをフーリエ第二モードまで拡張させたモデ
ル,一般化ハミルトニアン平均場モデルに着目する.この系は,Ferro相と
Para相に加え,単位円上のある相反する二方向にクラスターを形成しているネ
マティック(Nematic)相を持つ.Para-Ferro,Para-Nematic,Nematic-Ferro相
間のそれぞれにおいて,熱平衡状態における統計力学的応答と,準定常状態に
おける力学的応答に対する臨界指数を評価し,比較することが本研究の主題で
ある.これらの臨界指数を理論的に求め,以下の結果を得た.Para-Ferro,
Para-Nematic相間の相転移におけるPara相側については,いずれの相転移でも
統計力学的応答と力学的応答に対する臨界指数が同じ値を示す.一方で,
Para-Ferro相間におけるFerro相側,Para-Nematic相間におけるNematic相側の
臨界指数については,両者は異なる値を示す.後者はハミルトニアン平均場モ
デルのFerro相側での臨界指数と一致する.さらに,Nematic-Ferro相間につい
ては,統計力学的応答は臨界点で発散するが、力学的応答は発散しないことが
分かった.また,力学的応答に対するこれらの相間での臨界指数の理論値を,
系の時間発展を数値的に求めることにより検証する.

Last modified: Mon Mar 2 11:35:30 JST 2015