一方向回転性をもつ剛体の安定性解析

ラトルバックやケルト石と呼ばれる底ががねじれた舟形のおもちゃがある. こ
れは, 水平な床上である向きに水平回転させると安定して回るが, その逆向き
に水平回転させると大きく縦揺れして回転が止まり,その後回転する向きが反転
して安定に回る, という一方向回転性をもつ. この振る舞いを調べるために,
水平な床の上で滑らずに回転する楕円放物面を底にもつ剛体モデルが考えられ
ている. このモデルは, 剛体の重心からみた剛体と床との接触点の$x$座標と
$y$座標と, 重心まわりの角運動量の鉛直成分$n$という3つの変数と3つの微分
方程式で運動を表す. この接触点の位置が安定だということは, 回転中心がぶ
れずに剛体が安定的に回っているということであり, 接触点の位置が不安定だ
ということは剛体の縦揺れが増大しているということを意味する. エネルギー
保存則より, 剛体の縦揺れが増大するということは, 回転モードから振動モー
ドへエネルギーが流れ込んでいるということであり, 剛体の回転がいずれ止ま
ることが推察される. したがって, $x$,$y$について原点のまわりで線型化を行
い, 与えられた回転の向きをあらわす$n$の符号に対する接触点の位置の安定性
を調べることで,剛体が一方向回転性をもつかどうか調べることができる. 本研
究では, この微分方程式の特性方程式を解析し, 剛体の形に関するパラメータ
について解の定性的な挙動を分類することで, 一方向回転性をもつための剛体
の条件を調べた.