八面体群の対称性を持つ 球面上のエルミート行列ハミルトニアンとチャーン数

量子力学における$2$準位系のハミルトニアンの簡単なモデルとなる$2\times
2$トレースレスエルミート行列はパウリ行列の線形結合で表せることから,そ
の様な行列の全体は実$3$次元空間$\mathbb{R}^3$と同相である.逆に,$2\times
2$トレースレスエルミート行列は$\mathbb{R}^3$上の行列値関数とみなされる.こ
のエルミート行列に対し,$2$次特殊ユニタリ群$SU(2)$は随伴的に作用し,そ
の作用は$\mathbb{R}^3$への作用を引き起こす. $\mathbb{R}^3$への作用は
$3$次特殊直交群$SO(3)$であり,この写像によって$SU(2)$は$SO(3)$の被覆群
を成すことが示される. $\mathbb{R}^3$を$SO(3)$の軌道である球面$S^2$に制
限する事によって,エルミート行列は球面上の行列値関数とみなすことができ
る.このエルミート行列の固有空間は球面の各点で定義され,それらにより,
球面上の複素直線バンドルを構成することができる.そして,この複素直線バ
ンドルに対し,バンドルの性質を表す$1$つの指標としてチャーン数が求められ
る.

本研究では,この考え方を拡張して,$SO(3)$の部分群として八面体群
$\mathbb{O}$を選び,その$2,3$次の同次多項式への作用と表現を調べた上で,
その表現を基に八面体群$\mathbb{O}$に対する対称性を持たせたパラメータ付
きエルミート行列ハミルトニアンを構成し,その固有ベクトル空間から,球面
上の複素直線バンドルを構成した.そして構成したバンドルのチャーン数を求
め,パラメータの変化に対するチャーン数の変化を調べた.

また,$3\times 3$のエルミート行列に対しても,特殊な形に対してだが,複素
直線バンドルを構成し,チャーン数を調べた.
Last modified: Mon Mar 5 14:42:13 JST 2012