曲面上の懸垂曲線

自然界においてある平衡状態が実現するときは、なんらかの意味でその状態
が安定であると考えられるので、多くの場合、実現される状態はエネルギー
が最小または極小であるという形で表現される。つまり変分問題として定式
化できる。よく知られている変分問題の例として、一様重力が働いている3
次元ユークリッド空間に静かに置かれた線密度一定のひもが作る曲線の微分
方程式を求めるというものがある。その微分方程式は、ひもの長さ一定とい
う制限のもとでひものポテンシャルエネルギーが最小であるという条件から
導かれる。その解曲線は懸垂曲線と呼ばれる。本報告書では理論展開の舞台
を3 次元ユークリッド空間からn 次元リーマン多様体に拡張し、より一般的
な懸垂曲線の微分方程式を導出する。得られた結果を2 次元球面に適用して、
厳密解が楕円積分で表されることを示した。また、懸垂曲線の微分方程式を
数値的に積分することにより曲線の概形を図示した。数値計算の結果から、
ひもが球面の赤道付近にある時は球面上の懸垂曲線の形が平面上の懸垂曲線
の形とあまり変わらないことが分かった。そこで、赤道付近で摂動論を用い
て近似方程式を導出し、近似解を初等関数で表した。次に2 次元双曲面に適
用し、懸垂曲線の厳密解は超楕円積分で表されることが分かった。
Last modified: Mon Feb 20 12:31:12 JST 2012