Fermi-Pasta-Ulam $\alpha$-modelにおけるモード間エネルギー輸送


一次元の連成振動系では,隣り合った質点間の相互作用はバネによって記述され
るとみなせる. バネがフックの法則に従う線形なものであれば,各質点の位置と
運動量を適当に変数変換することによって各々が独立しているモードを定義で
きる.バネによる力がフックの法則に従わず,線形な項と非線形な項で記述され
るときは,線形項によってモードを定義することが出来るが,非線形項によって
モード間で相互作用が起こり,モード間でエネルギーの輸送が生じる.しかし,エ
ネルギー輸送は,一般にはすべてのモード間で生じるわけではなく,初期状態に
依存する.

バネのポテンシャルエネルギーが平衡位置からの変位の2乗に比例する項と3乗
に比例する項で書き表される一次元連成振動系をFermi-Pasta-Ulam (FPU)
$\alpha$-modelという.本報告では,固定端条件を持つFPU $\alpha$-modelに対
しモードを定義し,モード間のエネルギー輸送について調べた.各モードはその
波数によって番号付けした.結果として,バネの本数の2倍と,初期にエネルギー
を与えたモードを表す番号との最大公約数の倍数となる番号のモードには必ず
エネルギーが流れ,それ以外のモードには流れないことが分かった.

また発展として,FPU $\alpha$-modelにおいて,平衡位置では力を及ぼさない
On-Siteポテンシャルを各質点につけた場合のモード間エネルギー輸送について
調べた.On-Siteポテンシャルが質点によらず同一で,かつ平衡位置からの変位の
2乗に比例する場合及び4乗に比例する場合は,エネルギー輸送はOn-Siteポテン
シャルがない場合と変わらないことが分かった.3乗に比例する場合は,すべての
モードにエネルギーが流れることが分かった.

さらに,FPU $\alpha$-modelにおいて使用するバネが同一でなく,1本ずつ個性が
ある場合について調べた.2自由度の系では使用する3本のバネのうち,両端のバ
ネが同一でなければモード間エネルギー輸送に変化が生じることが分かった.一
般の自由度の系については,個性が生じることによりモード間エネルギー輸送に
変化が生じるとの予想を得た.