拡大ガリレイ群の作用する拡大力学系とその簡約化に関する古典・量子対応

古典力学の基本原理として「物理法則はいかなる慣性系においても同一の形を持つ」という ガリレイの相対原理がある.ある慣性系から見た事象の記述を,別の慣性系から見た記述に 移すことをガリレイ変換という.この変換の全体は群を成し,ガリレイ群と呼ばれる.実際 に,ニュートン方程式はガリレイ変換の下で共変であることが明白な形で示される. ガリレイ変換の空間及び時間への作用から,これらの接空間と余接空間への作用が決まる. しかし,接バンドルを相空間とするオイラー・ラグランジュ方程式や余接バンドルを相空間 とするハミルトン方程式にその作用を施して得られる方程式は,ニュートン方程式にガリレイ 変換を施したものと一致しない.結果,ラグランジアンやハミルトニアンはガリレイ変換で 不変ではなく,自然力学系の明白な共変性は損なわれている. これを解決する方法として,ガリレイ群と相空間の拡大がある.拡大された相空間への拡大 ガリレイ群の作用はニュートン方程式と整合する.そのため,拡大した相空間ではガリレイ 変換の下での明白な共変性を持ったラグランジュ力学系を記述できる. 本研究では,拡大相空間における自由粒子のハミルトン力学系を構成し,その力学系から対 称性に関する簡約化によって自然力学系を再現できることを調べた.また,簡約化に伴って 質量保存則を導き出した.更に,以上の拡大・簡約化の構成を多粒子系についても行うこと ができた.その際,この自由粒子から多粒子への拡張の仕方は1通りでなく,多時間系,共時 間系の2通りがあることが分かった.更に,この拡大したハミルトン力学系に対応する量子力 学系のシュレディンガー方程式を求めた.そうして得られた拡大量子力学系の簡約化によっ て,元の量子力学系を得られることを確認した.