ホロノーム拘束のあるポート・ハミルトン形式での制御

 ロボットハンドの研究において, 物体のつかむ場所をあらかじめ決めないで, 実
際に動かしてつかむという研究は21 世紀になってから始まったものであり, 文献
の数は少ない. さらに, 考案されているモデルは著者が知る限り, 全てラグランジュ
形式で表現されている.
 そこで, 本研究ではディラック構造から導出されたポート・ハミルトン形式でモ
デル化される制御系を考えた. 従来のモデルでは制御則を決めることで系のエネ
ルギーを確定し, そこからリヤプノフの安定性定理などを利用して平衡点が漸近安
定かどうかを調べていた. 本研究で扱ったモデルでは, 元の系が持つエネルギーに
さらにポテンシャルが加えられて, 全エネルギーがリヤプノフ関数となるように変
換される. その結果, そのポテンシャルと, ある条件を満たすように定めた関数から
自動的に制御則が決定する. 本研究では, 指と物体との間に転がり接触によるホロ
ノーム拘束のある制御モデルをポート・ハミルトン形式で表現することで, 従来と
は異なる制御則を得た.