平均場相互作用における強磁性体モデルの準定常状態

　磁化が0の状態の強磁性体に、外部から徐々に磁化をかけていくと磁化が
増えていくが、ある程度外部磁場を大きくすると、磁化は増えなくなる。
この状態から今度は磁化を減らしていくと、磁化は小さくなるが、磁場を
0にしても磁化は完全には0にならない。このような現象をヒステリシスという。
　本論文ではこの強磁性体におけるヒステリシスを、Hamiltonian mean-field(HMF)
モデルを導入して説明する。HMFモデルにおいては外部磁場が0のときに
磁化が0の状態と0でない状態が同時に熱的安定であることはない。よって
熱平衡状態を仮定していてはヒステリシスを説明することはできない。しかし、
HMFモデルでは熱平衡状態に緩和される前にしばしば準定常状態と呼ばれる
状態に長時間滞留する。この準定常状態での磁化の値は初期状態に依存
するので、履歴のために、磁場が同じでも異なる磁化の値をもつことがある。
よって準定常状態を用いるとヒステリシスが説明できると期待できる。
　そこで数値実験により、まず外部磁場を印加した場合でも準定常状態が
観測されることを確認した。そして磁場を変化させると、各磁場の値に応じた
準定常状態が現れ、その結果ヒステリシスが観測されることがわかった。