グローバーアルゴリズムによる最大エンタングメントの幾何

量子計算において,量子状態のエンタングルメント(絡み合い)は重要な概念で
ある.量子通信などに応用される量子テレポーテーションはエンタングルド状
態が重要な役割を果たす典型例といえる.  エンタングルメントの大小は, 局
所操作が全体系に波及する度合の大小に対応するので, 与えられた状態のエン
タングルメントの度合を何らかの尺度をもって測ることは重要である.  しか
しながら, 多粒子系からなる量子状態を考察の対象にする場合においては,絡
み合っていない状態, すなわち分離可能な状態はいくつかの部分系状態のテン
ソル積に分解するのであるが,量子系を何らかの部分系からなる複合系とみな
そうとしても,部分系のとり方を一意に決定できないためエンタングルメント
を特徴付けることが困難である.  本報告書では, 簡単のために n-キュビット
状態 (n>2)をp-キュビット状態と q-キュビット状態の2つの部分系の複合系
とみなすことでエンタングルメントの特徴付けを行う.  量子状態を複素行列 
C^{2^p\times 2^q} の元とみなすことで最大エンタングルド状態を数学的に定
義でき,さらにエンタングルメントに一つの尺度を与えることができるように
なる.  そして, Grover によって提案された2つの量子探索アルゴリズム
(1997,2005)を利用して分離可能状態から最大エンタングルド状態へ至る量子
状態の系列を生成し,そのエンタングルメントを評価する.  与えた尺度が確か
にエンタングルメントを特徴付けていることが示される.