ニューラルネットワークによる記憶と連想 ニューロンには活性状態と非活性状態との2つの状態があることが知られてい る。これら2つの状態を用いて1ニューロンに1ビットの記憶がされていると すると、脳内の全てのニューロンを使ったとしても100ギガバイトほどの記 憶容量にしかならないと言われている。そこで、ニューロン間のシナプス結合 の強度に可塑性があることから、結合強度を変化させることによって記憶が実 現されているのではないかと考えられている。シナプス結合の強度変化による 記憶をよく表現するモデルとして、本研究では、相互結合型ニューラルネット ワークによる連想記憶モデルを採り上げる。このモデルでは、各ニューロンの 状態を2値化した変数で表し、 個のニューロンの状態を集めた状態空間を考 える。シナプス結合の強度はニューロン間の結合定数として表現され、結合定 数は学習する状態空間内の点の集合及び各ニューロン間のシナプス結合の有無 によって決定される。状態空間内には連想過程としての時間発展が導入され、 結合定数によって状態空間内におけるアトラクターの数や種類、そのベイスン の大きさなどが決まる。アトラクターは記憶に、ベイスンの大きさは連想力に、 それぞれに対応する。先行研究では、ニューロンに自己結合のある場合につい てはあまり研究されていない。また、不動点アトラクターが学習した点かその 周辺になければ、記憶が失われたと解釈されることが多かった。本研究では、 自己結合のある場合も考察し、また、学習した点からの遠近に関わらず、不動 点アトラクター及びリミットサイクルを記憶と解釈する。この拡張の下、結合 定数を変化させて、状態空間内のアトラクターの数や種類、そのベイスンの大 きさなどを調べた。その結果、記憶や連想という機能が各ニューロン間のシナ プス結合の有無によって大きく変化することが分かった。このことから、実際 の脳の部位による機能の違いは、ニューロンとシナプスが作るネットワークの 違いに起因していると考えられる。