2次元鎖状分子の平衡構造

高分子とは、多数の原子が共有結合してできる分子であり、柔軟屈曲性のある
分子構造を持っている。それゆえに、高分子は低分子と大きく異なる特徴を持っ
ている。その中の一つは、高分子の基本的なサブユニットが起こす非線形的な
内部励起を遠くまで運べることである。 Mingaleevらは、この非線形的な励
起が高分子の構造のダイナミクスにおいて果たす新しい役割、つまり高分子結
合を局所的に弱くさせることを提案した。Mingaleevらは、サブユニットを粒
子のように扱い、内部励起を表す変数を用いて、2次元の分子鎖のモデルを構
成し、分子鎖の有効な剛性は励起の振幅の増加に従って減少していくことを示
した。そして、振幅がある閾値を超えると、有効な剛性が負になり、熱的な変
動が存在しなくても、分子鎖が曲がるようになる。振幅がさらに増加すると、
鎖状分子はコイルのように折りたたまれる。 分子鎖の平衡構造に着目すると、
粒子の位置によって決まるポテンシャルが重要と予想できる。そこで、分子鎖
の形がポテンシャルの形に依存するか否かを調べてみる。本論文では、
Mingaleevらが与えたポテンシャルおよびそれと定性的に異なる2種類のポテ
ンシャルを与える。これらのポテンシャルを用いて運動方程式を導出し、位置
に関しては平衡で時間変化せず、励起が周期運動する定常解を求める。それぞ
れのポテンシャルに対して得た平衡構造を比較したところ、Mingaleevらの観
察結果はポテンシャルの形に大きく依存することがわかった。