平面量子多体系の対称性と簡約化

力学系に対称性があるとそれに対応した
保存量が存在する.そして独立な保存量の数だけ
系の自由度を減らすことができ,これを力学系の簡約化という.
簡約化を行うことで一般に力学系の解析が簡単になる.
簡約化の理論についての研究は18世紀後半に
Euler や Lagrange らによって始められた.
その後 Hamilton, Jacobi,
Routh, Poincar\'e らによって古典系に対する研究結果が得られ,
それ以来現在もなお活発に研究が進められている.

また量子系に対する対称性の研究も同時に行われている.
Iwai らは3粒子からなる平面上の力学系において
配位の回転および同一種の粒子の交換に関する対称性による簡約化を行った,
また一般に$n$粒子からなる平面上の力学系に関しては
配位の回転対称性による簡約化を行っている.
しかし$n$粒子からなる系に関しては,同一種の粒子の交換
に関する対称性まで含めた系の簡約化はまだ行われていない.
そこで本報告では Iwai らの方法に従い,
同一種の$n$粒子からなる平面上の量子力学系で
2種類の対称性,すなわち重心を中心とする全粒子の回転対称性および,
粒子の交換に関する対称性を取り扱い,
これらの対称性を用いて簡約化を行う.

その結果,回転対称性により波動関数の空間を角運動量ごとの
部分空間に分解することができ,各部分空間の上で
簡約化された量子力学系を記述できることを示した.
さらに2粒子の交換対称性により,系を構成する
粒子が Bose 粒子である場合または Fermi 粒子である場合には,
それぞれの簡約化量子系は対称な関数または
反対称な関数の空間上で記述できることを示した.