決定論的フラクタルパターンにおける
フラクタル次元の普遍性

早川雄介

自然界には結晶成長・乾燥破壊・ビスカスフィンガリングなどのフラクタルパ
ターンがよく見られる。フラクタルパターンの研究の第一歩としてフラクタル
パターンを生成するモデルを構築し、フラクタル次元を測定することが挙げら
れる。フラクタルパターンを生成する数学的モデルとして、ある共形写像を単
位円に反復作用させるモデルが知られている。しかしこのモデルでは、写像が
持ついくつかのパラメータのうち、角度に関するパラメータの値を反復するご
とに無作為に選ぶため、フラクタル次元を計算することが困難である。そこで
反復ごとのパラメータの選び方を決定論的に行う方法が提案された。決定論的
な方法の一つとして、winding number というパラメータを使う方法がある。
n次方程式の解となり得る無理数をn次の無理数と呼ぶことにする。winding
number が2次のどのような無理数であっても、モデルがフラクタルパターン
を生成し、そのフラクタル次元が等しいという普遍性を持つことが知られてい
る。さらに、2次の無理数を有理近似し、近似の次数を変化させることにより、
フラクタル次元を測定する理論が提唱されている。本研究ではその次元測定理
論を応用することにより、winding number を3次の無理数や、超越数である 
e や π としたときのフラクタル次元を調べた。その結果、winding number 
がどんな3次の無理数でもフラクタル次元が等しいという普遍性を持つことが
わかった。また超越数 e と π のときのフラクタル次元は、数値実験結果か
ら判断する限り、初めに挙げた反復ごとのパラメータを無作為に選ぶモデルに
よるフラクタルパターンのフラクタル次元と一致すると見込まれる。