変形体の最適回転 角運動量をもつ物体は回転するが,逆は正しくない.実際,アメーバなどの微生 物は,外力を受けることなく自らの力で変形を繰り返し,角運動量が0であるに もかかわらず,結果的に回転することができる.これらの生物はできるだけエネ ルギーを使わずに変形を繰り返し,自らを回転させているに違いない.そこで, このような生物が変形を繰り返し,回転することをモデル化した.簡単のために 微生物は2次元であるとし,変形は線形変形であると仮定し,2次元の変形体をあ る角度だけ回転させる際に,エネルギーの散逸が最も少なくなるような変形が 最適変形であると考えて,最適化問題を解くことを目標とする.そのために,変 形の角運動量が0となる必要十分条件を求め,次に変形に対する散逸関数を設定 する.回転角が一定であるという拘束条件のもとで,この最適化問題が磁界中の 荷電粒子の運動と密接な関係があることを示し,変分原理により最適解の満た すべき微分方程式を求め,それを解く.しかし,この微分方程式を解くことは実 際には困難であるので,Runge-Kutta法を用いて数値解を求め,その解に対応す る変形はどのようなものであるか図示した.