n 体問題(多体問題)の歴史は古く、特に3体問題については古典力学の中心的問
題であり続け、最近になって新たに8の字型の周期解の存在が証明されている。
この n 体問題において、回転群 SO(3) の作用を考えるのは基本的であり、本論
文では、系の重心を原点に固定した上で、回転群 SO(3) の作用で不変な式につ
いて考察した。

3体重心系、4体重心系については、回転群 SO(3) の作用について不変な式に
ついて、よく知られた結果があり、不変な式を形状空間の座標に用いることによっ
て、形状空間のトポロジーも知られている。

本論文では、n>=5 の場合について、特異配位の場合とそうではない場合、それ
ぞれについて別々に回転群 SO(3) の作用で不変な式を求め、その不変式がそれ
ぞれの形状空間の座標系となることを示した。特異配位の場合、不変式を用いる
ことで、特異配位からなる形状空間がR_{+}\times RP^{n-2}に3重衝突を表す1
点を付け加えたものと同相になる。また、n 体重心系の配位はヤコビベクトルと
呼ばれるベクトルを用いて表すことが出来るが、回転群 SO(3) の作用で不変な
多項式の生成元は、このヤコビベクトルの内積と3重積の全体からなることが知
られている。特異配位でない場合に、座標となる不変式を用いてこれらの生成元
を表すことが出来ることを示した。

最後に、回転群 SO(n-1) の右作用を用いて n 体重心系の形状空間を軌道分解し
た。