理工学に現れる力学系では、何らかの拘束条件が付加されている場合が珍しく ない。拘束条件が積分多様体を定める場合は拘束をホロノーム拘束と呼び、そ うでない場合は非ホロノーム拘束と呼んでいる。平面上を滑らずに転がる球は、 非ホロノーム系の一例である。非ホロノーム系の制御という視点から、次のよ うなプレート・ボール問題が定式化されている。水平な土台の上に、1つの球 が乗っていて、土台と平行な上板が球の上部に接しているとする。上板を土台 との平行性を保ったまま動し、球を滑らせずに転がす。上板の移動速度を制御 入力とし、球の並進エネルギーを最小にするような制御入力を求める最適制御 問題がプレート・ボール問題である。 本報告書では、渡辺の論文に従い、プレート・ボール問題を、球の位置と姿勢 を決めるリー群$G = {\bf R}^2 \times SO(3)$上の制御系として考察する。こ の制御系は、$G$上の2つの左不変ベクトル場を用いて表される。それらのベ クトル場の交換関係を繰り返し計算することにより、プレート・ボール問題の 可制御性が示される。プレート・ボール問題に最大値原理を適用して、$G$の 接バンドル$TG$上の最適ハミルトン系を導出する。ここでの記述は大域的であ る。最適入力とそれに対応して定まるボールの挙動は、最適ハミルトン系の許 容する保存量を利用した変数低減によりうまく捉えられる。評価関数として、 回転エネルギー、時間、移動距離を採用した場合についても考察する。