1980年代R.P.Feynmanは量子コンピューターの可能性を予言した.そして,85年 Deutchは量子コンピューターによる計算は並列計算であるという見解を提唱し た.その後,量子計算を用いたShorの因数分解アルゴリズムが発見され,量子コ ンピューターの研究が活発化した.量子コンピューターの研究の副産物として 生まれたのが量子テレポーテーションと量子暗号である.本論文では,量子テレ ポーテーションの基礎理念であるentanglement(絡み合い)をVollbrechtらの文 献を参考にして再考した. 本論文では、量子NOT演算とentanglementを中心として考察していく.キュビッ トとはスピンupとdownの様に2つの固有状態を持つ量子系(粒子)の状態ベクト ルである. 2粒子系の状態ベクトルがentangledであるとは2粒子が絡み合った 状態,つまりキュビットのテンソル積の形に分解できない状態のことである.従 来はスピン系など2準位系でmaximally entanglementを考えるのが通例であっ たが,今回は3準位系のmaximally entangled基底を構成してみた.結果, $\mathbf{C}^3\otimes\mathbf{C}^3$でmaximally entangled基底を作れたが, $\mathbf{C}^2\otimes\mathbf{C}^2$でよく知られたBell基底の性質を保ちな がら拡張されたものとは言い難い.同様に$d\ge 3$の場合に,拡張型のベル基底 が作れるかどうかについて調べてみたが,望ましい性質を持つベル基底を作れ るのはキュビット($d=2$)の時のみであることが分かった.