微小なパラメ−タにより摂動を受けた常微分方程式を近似的に解く方法に正則 摂動法がある。しかし共鳴によって永年項が生じる場合は摂動が破綻し、この 近似解は局所的な時間領域でしか妥当でなくなる。特異摂動法の一つである繰 り込みの方法は、この正則摂動法に現れる永年項に対処し、大域的に妥当な近 似解を構成する目的で開発されたきた。この繰り込みの方法では正則摂動法で 構成した局所的近似解を次々に繋ぎ合わせて大域的な時間領域で妥当な近似解 を構成する。その際積分定数に永年項を繰り込むことになり、新たに積分定数 の時間変化を表す繰り込み方程式なる微分方程式を構築している。 しかし残念ながらこの繰り込みの方法を用いて体系的に解くことのできる常微 分方程式は限られており、多くの常微分方程式に対しては一般的な繰り込みの 方法論はできていない。そこでこの繰り込みの方法をより広い範囲の常微分方 程式に対して適用できるように拡張し、初期条件と指定された永年項から一意 に繰り込み解を構成する方法を示す。 次にこの繰り込みの方法を実際に応用することを考える。厳密解が振動である のに正則摂動法の無摂動解が発散する項をもつような場合がある。すると繰り 込みの方法は一見発散するものを繋ぎ合わせて振動させようとしているように 見える。このような場合に繰り込み解が妥当な大域的近似解として構成され得 るのかを調べる。今回はハミルトンの正準方程式をとりあげ、永年項を選ぶ際 に繰り込み方程式が正準性をもつよう考慮する。その結果、繰り込み方程式が 正準性をもつような、永年項の2通りの選び方で繰り込み解を振動させること ができた。