ネットワークが持つ性質の研究は、電話回線網やWorld Wide Web(WWW)のネッ
トワーク構築に必要不可欠である。これまで研究対象のネットワークといえば、
節点の連結性が完全にレギュラーなネットワークか、もしくは完全にランダム
なネットワークが主であった。レギュラーネットワークとは、ネットワークの
構成要素である節点が規則的に繋がっており、またランダムネットワークは、
逆に全く規則性を持たない繋がり方をしているネットワークである。しかし、
現代社会が構成する電話回線網やWWWネットワーク、そして人間関係のネット
ワークなどは、完全にレギュラーでも完全にランダムでもない。ここではこの
中間の性質を持つネットワークとして、高度なまとまりを持つ節点集団が存在
し、一方で短い特性路長を持つようなネットワークをスモールワールドネット
ワークと呼ぶ。

スモールワールドネットワークの研究はここ数年に始まったばかりであり、
Watts and Strogatz[{\it Nature,\/}{\bf 393}:440-442,1998.]によってはじ
めてスモールワールドネットワークの生成方法が開発された。その方法とは、
レギュラーネットワークを初期状態として全枝数を変化させずに枝を繋ぎなお
すといったもので、レギュラーネットワークとランダムネットワークの中間の
特徴を兼ね備えたネットワークの実現に成功している。しかし、これまでの研
究では、スモールワールドネットワークが実現される条件は詳細には調べられ
ていない。そこで本研究では、スモールワールドネットワークに関する理解を
更に深めるため、レギュラーネットワークの種々の節点数及び枝数に対する、
スモールワールドネットワークの実現可能範囲を導き出す。

まず、Watts and Strogatzと同様に節点数及び全枝数を一定に保ち、レギュラー
ネットワークからスモールワールドネットワークを生成した。次に、節点数及
び枝数を変化させて、スモールワールドネットワークの生成条件を導出した。
その結果、節点数が多い場合はスモールワールドネットワークの生成条件が、
節点数に対する枝数の割合に依存する事が判明した。更にその時スモールワー
ルドネットワークの実現され得る範囲を調査したところ、それが節点数に対す
る枝数の割合の、ある限られた範囲であることが分かった。