Shr{\" odinger}方程式は,量子力学系の波動関数の時間発展を記述する方程 式である.したがって,Schr{\" o}dinger方程式が解ければ,その量子力学系 の挙動を原理的には完全にしることが可能である.現実問題としては, Schr{\" o}dinger方程式が「解ける」場合は極めて稀であって,これまでも近 似的な解を得る努力をするのが普通である.WKB(Wentzel-Kramers-Brillouin) 近似法は,Schr\"odinger方程式の近似解を得るための代表的な手法として, 幅広く応用されている.この手法は,標語的には指数関数型の解を仮定し、そ れの$\hbar$のべき級数展開の一次近似をとることに基づいている.WKB近似解 は,$\hbar$が「非常に小さい」事実に基づいた漸近解としての性格を持ち, 広く活用されると同時に,その収束性に関する意味付けや適用範囲を巡って議 論がなされてきた. A.~Vorosは,1983年の長編の論文において,WKB近似法の 数学的意味づけがBorel総和法により可能になることを論じた. 彼の手法は現 在では完全WKB解析と呼ばれている.本報告書の目的は,Airy方程式を対象に して完全WKB解析と従来のWKB近似法とを比較しながら論じることにある.特に, WKB近似解に対する接続公式が,完全WKB解析を通じて極めて明快に説明される. 完全WKB解析によって得られたAiry方程式のWKB解の可能なすべての接続を考え た.得られた接続公式は,Vorosによる一般的な接続公式をAiry方程式に適用 したものに一致した.