波はどのようにしてできるのだろうか?一般に、我々が海岸で見ている 波は、はるか遠い外洋で風波として生まれる.風波は水面に風が吹くこと によって生ずる,一見ランダムに運動する波である.しかし,海洋物理学者 の努力によって,ランダムな中にも統計的な秩序というものが存在するこ とがわかってきた.スベルドラップ・ムンクはこの統計的性質を記述する ため,有義波(significant wave)の概念を導入した.今からおよそ50年前 のことである. そして現在,風波現象に対して多くの研究がなされ,風波の統計的性質を エネルギースペクトルなどを通して追うことにより,現象のある程度のダ イナミクスを解明することに成功している.このような,エネルギースペ クトルなどを扱い,統計的な視点から風波にアプローチする研究が多くな されている中で,風波現象のダイナミクスをより直観的に捉えるため,本 研究は風波のモデルを構築していくという構成論的方法で風波現象を考察 する.この方法では,モデルがもたらす現象を現実の現象と比較すること で,風波の統計的及び力学的性質を支配する主要なダイナミクスを解明し ていく. 風波現象のダイナミクスの構成要素として,風による水の移動と砕波の 効果だけを考慮したモデルを創り,シミュレーションを行った.結果として, このモデルで風波現象の統計的性質の一端を再現することができ,風波ダ イナミクスの解明への一歩を踏み出したといえる.