1984年、Karmarkar は内点法による線形計画問題の解法を示した。よく知られ
た解法であるシンプレックス法が実行可能領域の頂点を経由して最適解に到達
するのに対し、内点法は実行可能領域の内部を通って最適解にたどり着くのが
特徴である。以来、多くの内点法での解法が研究されている。

本論文では L.Faybusovich のアイデアに基づき、線形計画問題の最適解に収
束する積分曲線を持つベクトル場の構成と考察を行う。線形計画問題は「角の
ある」多面体を実行可能領域とした問題であるが、これを他の滑らかな多様体
上の最適化問題へ変換し、その空間上で最適化問題を解くベクトル場を構成す
る。このベクトル場の解曲線は指数関数オーダーの速さで最適解に収束するこ
とが証明できる。また、このベクトル場の解曲線の構成法を与える。さらに、
ポワソン力学系として、この最適化問題を扱う方法を与える。すなわち、
$R^{n}\times R^{n}$ 上に、あるポワソン構造を定義し、簡単なハミルトン関
数を与えて一つのポワソン力学系を定義し、制約条件に付随する可換群の作用
でこの力学系を簡約化すると、簡約化力学系のハミルトンベクトル場は、実質
的に上述の最適化問題を解くベクトル場に一致する。

力学系としての捉え方から、線形計画問題と戸田格子との関連が見出せる。ま
た、Brockett の2重括弧方程式や線形スケーリングベクトル場との比較を行
う。