研究紹介

本研究室では、力学系理論の手法を用いて、自然科学や工学分野等に現れるさまざまなシステムで起こる、カオスや分岐等の複雑現象を解明し、新たな工学技術を創生することを目標としています。この目標のため、従来の理論に留まらず、力学系の革新的な理論の構築に挑戦しています。さらに、精度保証計算や大規模数値シミュレーション等の数値的な手法も用いて、以下のような課題に取り組んでいます。

1. 無限次元力学系における力学系理論の展開と応用

無限自由度ハミルトン系等の偏微分方程式系やネットワーク上の結合振動子系で生じるパルス解の分岐、安定性およびパターン形成に対する理論を構築しする。 また、それらの系に対する精度保証付き数値分岐解析手法を確立する。

パルス解の分岐
連立非線形シュレディンガー方程式におけるパルス解の分岐

2. さまざまな微分方程式系における多様な分岐構造の解明

ハミルトン系、反転可能系、区分的に滑らかな系や確率力学系等さまざまな微分方程式系を取りあげ、分岐現象に対する理論を構築し、分岐構造を明らかにする。

超8の字解
古典力学の4体問題における超8の字解

3. 非可積分性とカオスおよびそれらの関連性

微分ガロア理論やMorales-Ramis理論およびMelnikovの方法を用いて力学系の非可積分性やカオス、およびそれらの関連性について明らかにする。

非可積分性とカオス

4. 多体ハミルトン系の平衡・非平衡統計力学とダイナミクス

多数の粒子を一つ一つ考える代わりに、それらの分布によって系の時間発展を記述し、粒子が集団としてどのような時間発展を行うかを調べる。例えば、非平衡状態での相転移や、熱平衡状態への緩和時間の粒子数依存性、代数的な遅い緩和の存在等がわかる。また、系に外力をかけて応答を考えることにより、線形応答理論等へと応用できる。

相転移
準定常状態での相転移と熱平衡状態への緩和

5. 自然科学、工学および社会科学分野への応用

力学系理論の知識に基づき、さまざまなデータサイエンスのアプローチを開発する。 また,力学系理論の手法を用いて、

感染症の伝播現象の解明、宇宙ロケットの低コスト軌道の設計、ドローンの運動制御

など、自然科学や工学に留まらず社会科学分野における諸問題に挑戦する。

ロケットの軌道
地球から月へのロケットの低コスト軌道

ドローン
ドローンのダイナミクス


Last modified: Wed Apr 2 20:18:51 JST 2014