Colloquium

平均場モデルにおける非平均場的臨界指数

小川 駿

5月10日(金) 13時30分

平均場のユニバーサリティに属する系では, 統計力学の処方箋に従って感受率の臨界指数γを求めると, 秩序, 無秩序相の両方で1になる[1]. ハミルトニアン平均場モデルもこの様な系の一つであり, 粒子数Nを無限大に取る極限では平均場近似が厳密になり, 臨界指数も平均場のそれと一致する[2]. ところで, ハミルトニアン平均場モデルのダイナミクスは, Nを無限大に取る極限ではVlasov方程式で記述される[3]. 本講演ではまず, このVlasov方程式に基づく線形応答理論[4]から 孤立感受率を求め, 臨界指数を計算すると, 1/4になり, 明らかに統計力学から得られる結果と異なることを示す. そして, この差異の原因がCasimir不変量にあることを示す. さらに, 多体計算により, 有限系において, 臨界指数1/4が観測される時間スケールは 粒子数Nに比例し, その後, 有限N効果により平衡化し, 臨界指数1が見られることを観察する. つまり, 十分に大きい平均場系に小さい外場を加え, その感受率を測定しても, 有限だが非常に長い時間は 統計力学の結果は再現されない. 本発表はAurelio Patelli氏(Univ. Florence)と山口義幸氏 との共同研究[5]に基づく.

[1] H. Nishimori and G. Ortiz, ``Elements of Phase Transitions and
Critical Phenomena'' (Oxford University Press, New York, 2011).
[2] A. Campa, T. Dauxois, and S. Ruffo, Phys. Rep. 480, 57 (2009).
[3] H. Spohn, ``Large Scale Dynamics of Interacting Particles'' (Springer-Verlag, Berlin, 1991).
[4] SO and Y. Y. Yamaguchi, Phys. Rev. E. 85, 061115 (2012).
[5] SO, A. Patelli, and Y. Y. Yamaguchi, arXiv:1304.2982.