Colloquium

Vlasov方程式の空間非一様定常解の安定性判別式

小川 駿

12月14日(金) 13時30分

ここ数年, 空間非一様準定常状態周辺のダイナミクスに関する研究に進展が見られる[1-5]. 準定常状態とはVlasov方程式(無衝突Boltzmann方程式とも呼ばれている)の安定定常解であると認識されており, [2-5]では空間非一様定常解は安定であるということが前提とされていた. 故に, Vlasov方程式の定常解の安定性の判別は準定常状態やその周辺のダイナミクスに関する研究の第一歩であるとも考えられる. Vlasov方程式の空間非一様定常解のフォーマル安定性の判別式は[1]で導出されている. しかし, [1]で示されている必要十分条件の判別式を書き下すには無限個のCasimir不変量に対応するLagrange未定乗数を求める必要がある. 今回はこの無限個のLagrange未定乗数に関する問題を回避し, Vlasov方程式の空間非一様定常解のフォーマル安定性の必要十分な判別式を得たので, その紹介をする. まずは一般的なモデルで形式的に判別式を導出してから, 有用なトイモデルであるHamiltonian平均場モデルを用いて詳細な議論をする.

[1] A. Campa and P. H. Chavanis, J. Stat. Mech. P06001(2010).
[2] J. Barre ́, A. Olivetti and Y. Y. Yamaguchi, J. Stat. Mech. P08002 (2010).
[3] J. Barre ́, A. Olivetti and Y. Y. Yamaguchi, J. Phys. A: Math. Gen. 44, 405502 (2011).
[4] S. Ogawa and Y. Y. Yamaguchi, Phys. Rev. E 86, 061115 (2012).
[5] J. Barre ́and Y. Y. Yamaguchi, arXiv:1210.8040.